みなさんは「今東光(こんとうこう)」という作家さんをご存じでしょうか?
「今東光」は明治31年に横浜で生まれました。
父親は海外航路の船長、母親は明治女学校卒業の才女だったそうです。
幼少の頃は、父親の転勤で北海道・横浜・大阪と引っ越しが続き、10歳から神戸で育ちました。
その頃から文学に興味を持ち、永井荷風・谷崎潤一郎を尊敬していたそうなのですが、当時の文通友達が北原白秋と室井犀星だったそうです。
その後、関西学院中学部に進学しましたが、牧師の娘さんとの交際がバレて退学処分、転校先の県立豊岡中学でも地元の女の子との交際がバレて退校処分になったということです。
中学校を中退した後は、独学で文学の勉強をして小説家・僧侶・参議院議員などの職業に就いたということを知って、大変驚きました。
「今東光」が八尾市西山本町の天台院に赴任したのは昭和26年から昭和50年までの24年間。
八尾に赴任してくる前には一度作家業から退いていたそうですが、八尾の歴史や文化に触れてもう一度作家活動を始めたということです。
八尾図書館の3階にある「今東光資料館」は静かで厳かな空間
八尾市役所の向かい側に八尾図書館があります。
図書館の建物の入口を入ると、すぐ右手が八尾図書館です。
そして左手には「今東光資料館」への案内があります。
この奥にエレベーターがあるので3階にあがってください。
エレベーターを降りると資料館の入口が見えました。
今回は「河内・八尾の歴史と今東光」というテーマで展示しているようです。
私が訪れたのが平日ということもあって、3階のフロアは静かで落ち着いた感じの厳かな雰囲気でした。
昭和20年代から昭和50年代までの八尾の様子と史跡
中に入るとまず目に飛び込んで来るのが、「今東光」が八尾で暮らしていた頃の八尾市の様子です。
24枚の写真と解説資料で、当時の学校の様子や農業・産業の様子がよくわかります。
八尾市には史跡・古墳もたくさんあるのですが、そのいくつかを画像や資料で紹介してくれています。
八尾市内の史跡や古墳も公開しているところが多いので、興味のある方はぜひ訪れてみて下さいね。
現在「今東光資料館」では、3種類の瓦も展示されています。
この「均整唐草文軒平瓦」はそのうちの1つなのですが、奈良時代に使われていた瓦が、まだこんな大きさで残っているのは保管・管理を丁寧に行ってきた証なのだと思われます。
八尾には郷土史関連のおもな文化施設が5ヵ所あるようです。
私はまだこの5ヶ所には行ったことがないのですが、なかなか興味深い文化施設ばかりなので、近々①の「しおんじやま古墳学習館」から順に見学に行ってみようかと思います。
③の「環山楼」は周りの景色も楽しみながら散策してみたい場所なんですよね。
現存する書籍・原稿・台本の数々に感動
「今東光」は歴史的文学を多く残しています。
時代や人物を深く掘り下げた作品は、歴史コミックの原作となっていたり、映画の原作にもなっています。
資料館には「今東光」の直筆原稿や初版本も保存されています。
今は、書物の原稿も漫画の原稿もパソコンで創作されることが多いのですが、昭和の時代にはまだ原稿用紙にペンや万年筆で執筆されていたのですね。
「平泉・中尊寺」の直筆原稿には、赤ペンでの校閲の跡も残っているのがとてもリアルです。
直筆の原稿を実際に見たのは初めてだったので、「これがプロの作家の直筆原稿なんだ!」と思うと感動しました。
そして上の画像の原稿が下のように製本されていたということですね。
資料館には「平泉・中尊寺」以外にも初版本や原稿、映画化された作品の台本なども展示されているので、ぜひじっくり見ていただきたいと思います。
ハイテク映像システムはこどもから大人まで楽しめる
資料館内には「今東光の書斎と語りコーナー」があります。
ここでは現存する「今東光」の映像を観ることができるのですが、これまで他の資料館や博物館で見た映像コーナーは、パネルにボタンがついていて見たいものを選んでボタンを押して再生するものでした。
でもここの資料館は少し違っています。
パネルには青白い光の文字が浮かんでいて、見たい項目を選んでパネルの上に手を差し出して、その文字を手のひらに映します。
手のひらに文字が映ったら、数秒そのまま待っていると映像の再生が始まります。
今回は、作家・谷崎純一郎氏との対談を見せていただきました。
当時の音声と映像が再現されていて、とても興味深いコーナーだと思います。
「今東光の書斎と語りコーナー」では、パネルに浮かぶタイトルは1回で4つずつですが、6パターンあるのでお目当てのタイトルが表示されるまで待ってから手のひらに文字を映すと良いですね。
「今東光」の150以上の作品、八尾図書館ならではの所蔵
資料館には「今東光」の150作品以上の展示コーナーがあるのですが、1階の八尾図書館にはその中の105作品が所蔵されているそうです。
資料室で見て気になった作品を借りて読んでみるのも良いかも知れません。
資料室には「今東光」の直筆のサイン色紙も展示されていました。
力強く美しい字ですよね。
中学を中退した「今東光」が作家として、僧侶として、政治家として歩んできた人生を表すような4文字だと思いました。
資料室を出て左側の壁には、「今東光」原作の映画のポスターも展示されていました。
勝新太郎・田宮二郎・フランキー堺・野川由美子など往年の名俳優さんたちの名前が並んでいます。
私は、この資料館を訪れるまで「今東光」が、こんなにも八尾にゆかりのある有名な作家だったことを知りませんでした。
資料館には、今回紹介した資料や展示以外にもたくさんの興味深い展示コーナーがあります。
ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
今東光資料館
住所:大阪府八尾市本町2丁目2-8(八尾図書館3F)
アクセス:近鉄大阪線「近鉄八尾駅」より徒歩約7分
JR大和路線「八尾駅」より徒歩約16分
営業時間: 10:00~17:00
電話番号:072-943-3810
休館日:月曜日、年末年始